「値下げ」が正義の国で学んだこと。100人の新規より、1人の「肌が変わった」を追いかけて。

「無料、半額、今だけプレゼント(3buy 1free)」

街を歩けば、至る所でそんな甘い誘惑が目に飛び込んでくる。 私がかつて身を置いていたのは、リピート購入という概念すらまだ希薄だった、熱気あふれるタイの地でした。

日本を代表する老舗化粧品ブランドの新規事業立ち上げ。 日本の認知度は100%でも、海を渡ればそこは未知の戦場です。所得層を考えれば、誰もが気軽に買える商品ではありません。正直に言えば、買ってくださるお客様は、現地の超リッチな富裕層の方々でした(笑)。

通販・自社サイト1本。この「逃げ場のない戦い」の中で、私はCRMの本質を叩き込まれることになります。

物理的な誘惑が「1駅に1つ」ある世界で

特に私がいたバンコクは、世界でも有数のショッピングモール激戦区です。 BTS(モノレール)の一駅ごとに巨大なモールがそびえ立ち、その中身は多種多様。日本よりも遥かに豪華で眩いばかりの高級モールから、現地っぽいエネルギーに満ちたごちゃごちゃしたモールまで、ありとあらゆる選択肢が文字通り「無限」に広がっています。

タイの方々にとって、買い物は最高のエンターテインメント。新しいもの、流行っているものに目がありません。

そんな「浮気の選択肢」が無限にある環境で、なぜ彼女たちは、わざわざ自社サイトにアクセスし、私たちの商品を買い続けてくれたのか?

世界中の名だたるブランドを使い倒してきた彼女たちが、最後に求めていたのは、ブランドロゴの華やかさではありませんでした。

選択肢が無限にある人に、選ばれ続ける理由

ある時、愛用者の方にインタビューをしました。 エレガントな彼女は、少し照れながら、でも嬉しそうに自分の頬を触りながらこう言いました。

「この化粧品に出会って、長年の悩みが消えて肌が本当に変わったの。自分に自信が持てるようになった。だから、もうこれ以外は考えられないわ」

その時、確信しました。 どれだけお金を持っていても、どれだけ選択肢があっても、最後に人が求めているのは「自分の悩みを解決してくれる、誠実な手応え」なのだと。

100人の「新規様」を値下げで集めることよりも、この女性のように「使ってよかった」と確信してくれる1人を守り抜くこと。それこそが、私たちがやるべき「誠実な商売」の正体でした。

データは「数字」ではなく、お客様の「心の足跡」

タイでの経験は、私に「データを見る目」を教えてくれました。 CRMのデータは、単なる数字の羅列ではありません。

「購入の間隔が少し空いた」というデータは、もしかしたら「他社の新製品に目移りしている」というサインかもしれない。あるいは「使い方が分からず、効果を実感できていない」というSOSかもしれない。

もし、このサインを見逃して、新しいお客様ばかり追いかけていたら。それは、信頼してくださっている方を裏切るのと同じではないでしょうか。

日本に帰り、今のCRM診断の仕事をする中で、私は多くの「もったいない」現場を見ています。「180日以内ならアクティブ」という冷たい定義の裏側で、救えたはずのファンを毎月何千人も見捨てている。

私は、それがどうしても我慢できないのです。

一期一会を、一生のお付き合いに

「買ってもらえればいい」 「とにかく値下げで数字を作ればいい」

そんな一期一会の商売は、もう終わりにしませんか。 データを正しく見ることは、お客様の人生に寄り添い、誠実な対話を続けることです。

私は、タイのお客様が教えてくれた「悩みが消えた時の笑顔」を、日本のEC・通販の世界でもっと増やしたい。

このnoteでは、手法の話だけでなく、その裏側にある「1人のお客様と末長くお付き合いするための哲学」をお話ししていきます。あなたのバケツに、もうこれ以上、無駄な水を注がせないために。

これから、どうぞよろしくお願いします。

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