コホート分析とは|「いつ来たか」で顧客を分けると、離脱パターンが見える

glossary

コホート分析とは

コホート分析とは、同じ時期に獲得した顧客グループ(コホート)の行動を時系列で追い続けることで、顧客がいつ、どの段階で離脱しているかを把握する分析手法。顧客には「購買パターンの改善可能性」を、企業には「打つべき施策のタイミング」を示す。

バーでの物語

金曜夜のバーカウンター。サプリメントEC「レイウェルネス」のれいが、いつもより疲れた顔でマスターに座った。

れい「マスター、困ったことがあります。月ごとに新規顧客の数は増えてるんですが、LTVが全然上がらない。何が起きてるのか、さっぱり…」

マスター「月ごとにね。新規顧客の数と月の売上だけを追ってると、落とし穴がある。その新規顧客たちが、『いつ来たか』で分けて、追ってみたことは?」

れい「いつ来たか…? 1月に来た人、2月に来た人、みたいに?」

マスター「そう。サプリメントって、最初の21日が習慣化の勝負だって言ってたよね」

れい「あ、そうなんです。習慣化できる人とできない人で大きく分かれる。」

マスター「じゃあね。1月に獲得した100人が、2月にはいくら買ったか。2月の100人は3月にいくら買ったか。こうやって『同じ時期の顧客グループ』の時間経過による購買パターンを並べて見るんだ。それがコホート分析。」

れい「なるほど…。月ごとの売上だけ見てると、新規が増えてるから『うまくいってる』と思ってた。でも実は、『古い顧客が離脱してて、新しい顧客が来てるだけ』かもしれない、と?」

マスター「その通り。これが多くのEC企業が陥る罠だ。月間新規数と月間売上だけを見てると、『アクセルを踏み続けてる』気になるが、実は『バケツに穴が開いたまま新水を注ぎ続けてる』状態。」

れい「ひえ…。どうやって見えば良いんですか?」

マスター「簡単だ。今月の新規100人が、来月いくらの売上を生むか。その翌月は?その翌月は?この『同じ時期に来た人たち』の行動を追い続ける。そしたらね、『3ヶ月目で急に売上が落ちる』みたいなパターンが見える。」

れい「3ヶ月目…。あ、サプリって『体感されるまでに最低3ヶ月かかる』って言われてるんです。だから3ヶ月目でリピートが落ちるんだ…!」

マスター「そこ。そしたら3ヶ月目に何をするか。『もう結果出てきた頃だから、次のステップに案内しよう』とか『体感を促すコンテンツを送ろう』とか。打つべき施策が見える。」

れい「今までは3ヶ月目のリピート率が落ちてることにすら気づいてなかった。ただ『今月の新規が100人だから良好』みたいなノリで…」

マスター「コホート分析がないと、得られるのは『今月の数字』だけ。コホート分析をすると、得られるのは『このグループの人生』。その人生の中で、いつ何が起きてるか。それが見える。」

ありがちな失敗

多くの企業がやりがちなのは、「月ごとの新規数」「月ごとの売上」だけを眺めて、『今月は好調、来月は不調』という波に一喜一憂することだ。しかし実際には、去年の1月に来た顧客が3年目で離脱し始めたのかもしれない。今月の新規100人も、来月には30人しかリピートしないかもしれない。月単位では見えない『顧客の寿命パターン』がコホート分析で初めて浮かび上がる。ある化粧品EC企業は、月間新規数が毎月300人で「右肩上がり」だと喜んでいたが、コホート分析をしてみたら、実は3ヶ月後のリピート率が15%から8%に低下していた。新規の質が落ちていることに、月次データでは気づけなかったのだ。

コホート分析 基本の見方

【月ごとの新規数】だけ見た場合
1月: 100人獲得 → 「好調」と判定
2月: 120人獲得 → 「さらに好調」と判定
3月: 90人獲得 → 「落ち込み」と判定

【コホート分析】で見た場合
1月コホート(100人)→ 2月購買: 35人(35%)→ 3月購買: 8人(8%)→ 4月購買: 2人(2%)
2月コホート(120人)→ 3月購買: 42人(35%)→ 4月購買: 9人(7.5%)
3月コホート(90人)→ 4月購買: 31人(34%)→ 5月購買: 7人(7.7%)

→ 毎月のリピート率は安定(35%→8%で頭打ち)。問題は「4ヶ月目以降の施策がない」ことに気づく

📋 本日の処方箋

  1. 【なぜやるか】新規数の増減だけでは「バケツの穴」が見えないから
    【どうやるか】Googleアナリティクス、または自社DBで、「獲得月ごと」に顧客をグループ分けし、時系列で購買金額・リピート率・継続率を追跡する表を作る。少なくとも過去12ヶ月分のコホートを用意する。
  2. 【なぜやるか】離脱タイミングのパターンを見つけると、施策のタイミングが決まるから
    【どうやるか】「3ヶ月目で急に落ちる」「6ヶ月目で戻る」など、コホートごとの行動パターンを読む。その時点で「何が起きているか」を顧客に聞いたり、データを掘ったりして、必要な施策を逆算する。
  3. 【なぜやるか】新規の「量」と「質」を分離して見られるから
    【どうやるか】新規数が同じ月でも、リピート率が異なっていないか確認する。新規100人でリピート35%の月と、新規100人でリピート20%の月があれば、「集客チャネルの質が下がった」または「新規向けコンテンツが悪化した」という仮説が立つ。
  4. 【なぜやるか】顧客LTVの予測精度が上がり、広告予算の最適化ができるから
    【どうやるか】コホートごとに「初回購買から36ヶ月間の総売上」を計算する。それを新規獲得コスト(CAC)と比較し、「何ヶ月でペイできるか」を見極める。不採算コホートがあれば、その集客チャネルを絞る判断ができる。
  5. 【なぜやるか】施策の効果を「月ごと」ではなく「顧客ライフサイクル」で測定できるから
    【どうやるか】新しい施策(例:3ヶ月目のリテンションメール新設)を打ったら、「その月の新規数」ではなく、その施策が当たった後の「コホートのリピート率推移」で効果を測る。月ごとのノイズに惑わされない。

業種を超えた応用例

コホート分析の威力は、サプリメント業界だけの話ではない。化粧品ECなら「ターンオーバー28日周期の3回目(約85日目)で肌の変化を実感する層」が見える。ペットフード企業なら「購入から8週間でフードが体に馴染み、被毛変化が見える層」の離脱パターンが見える。アウトドア用品なら「春と秋のシーズンごとに買い替えサイクルが異なる層」を分けて追跡できる。つまり、「商品の効果が出るまでの時間」がわかるビジネスほど、コホート分析は強力な羅針盤になるのだ。

タイトルとURLをコピーしました