購買行動や利用状態によって顧客を複数のグループに分けて、施策前後でそのグループ構成や移動がどう変わったかを追跡することだ。単なる「顧客数が増えた」ではなく、「どの顧客状態の人たちが増えて、どの状態の人たちが減ったか」を見ることで、施策が本当に機能しているのか判断する。
そうが来た。いつもより疲れた顔をしている。
「あ、マスター。ちょっと…」
「どうした。コンビニ弁当の時間か」
「違います。あ、そっか。寝不足ですね」
カップ水を渡した。
「上司から『今月のメールキャンペーンの効果を数字で示して』って言われたんです。開封率も高かったし、クリック数も増えてたし、購入数も増えたんですけど…」
「ああ」
「『効果があった』って報告したら、『で、どのセグメントの顧客が増えたんだ』って返されて。セグメントとかって…」
マスターはグラスを磨きながら、そうの顔を見た。
「まずさ。君の会社、顧客をどう分けてる」
「あ、分けてないです。全員に同じメール送ってます」
「じゃあ分析もできないな」
「え」
「開封率が高かった。購入数も増えた。それ自体は悪くない。でも、『誰が増えたか』を見てないから、次の施策が決まらない」
マスターはメモを出した。
「サプリって、最初の購入から3ヶ月が勝負だろ」
「あ、はい。継続できるかどうか…」
「そこだ。メールを送った後、『初回から21日以内の新規』『2ヶ月続いてる人』『半年続いてる人』『1年以上継続してる人』。この4つのグループがいるはずだ」
「はい」
「その4つが、施策前後でどう移動したか見る。例えば『21日以内の新規が増えた』なら、まだ習慣化してない人に刺さった。『2ヶ月の人が半年に移った』なら、継続層へ働きかけが効いた。違う施策が必要ってわかる」
そうはうなずいた。でも何か腑に落ちていないような顔をしている。
「でも、開封率も高かったし、買った人も…」
「そう。だから、数字だけ見ると『よかった』に見える」
マスターはメモに線を引いた。
施策前のセグメント構成を基準に、施策後の「セグメント移動」を見る。ただし配信対象がセグメントごとに異なる場合は、それぞれの移動率を比較する
「例えばさ。全員にメール送った。開封率40%。購入数も月比で30%増えた。『よくやった』って喜ぶ」
「はい。普通そう思いませんか」
「普通そう思う。でも、実は新規だけが増えてる。2ヶ月目以上の人たちは変わってない。メール送らなくても増えてたかもしれない」
「あ」
そうの顔が変わった。
「さらにね。新規が増えてるんだけど、21日を超えて継続する率が落ちてる。新規を『買わせた』けど、『続けさせてない』状態だ」
「え、でも購入数が増えたら…」
「増えたのは購入数。継続数じゃない。サプリは3ヶ月続かない限り、体感の効果が出ない。1回、2回買っただけの人は、そこで終わる」
マスターはグラスを置いた。
「開封率が高い」「購入数が増えた」。その数字だけ見てると、セグメント内部で何が起きてるかが見えない。新規バイアスで全体が良く見えてるだけ。
そうはスマートフォンを出した。気づいたんだろう。自分の会社が何も分けていない理由に。
「あ、だから上司が『どのセグメント』って聞いたのか」
「そういうこと。施策の本当の効果を知りたかった」
「でもうちの会社、セグメント分析してないんです。全員に同じメール…」
「だから次がない。同じメールをリピートするだけになる。半年後、開封率は20%に落ちてる」
そうは静かに聞いていた。
「では、どうすれば…」
「まず分けることだ。新規と既存は最低限分ける。余裕があれば、既存の中で『2ヶ月未満』『3ヶ月以上』に分ける。その程度で十分」
「あ、でも…」
「何」
「メール一本一本が違う内容になるんですか。その分析」
マスターは少し笑った。
「そこだな。分析と施策は別の話だ。分析は『何が起きてるか』を知ることだけ。施策はその後で考える。今は、まず『現状がどうか』を見ることが先だ」
そうは帰る際、マスターに聞いた。
「セグメント分析って、難しいんですか」
「難しくない。ただ、『何をセグメントにするか』は、商材と会社の見方で変わる。それを決めてない会社が多いってだけだ」
そうはうなずいて帰った。翌日、自分の会社の顧客リストを見て、購買回数で分けてみるんだろう。多分、新規の多さに気づくはずだ。
よくある質問
Q:セグメント分析と「セグメント施策」は同じですか?
A:違う。セグメント分析は「現状把握」。セグメント施策は「その後の打ち手」だ。分析なしに施策を作ると、全員向けの薄い内容になりやすい。
Q:セグメントは何種類あればいいですか?
A:最初は2〜4個で十分。多すぎると管理が破綻する。ビジネスにとって「本当に意味が違う」グループだけ分ける。
Q:施策前後で数字が変わらなかったら、セグメント分析は意味がないですか?
A:むしろそれが重要な発見だ。「新規は増えたが継続層は変わらない」「全セグメント均等に増えた」など、施策の本当の効きどころが見える。
Jリーグは施策後に「顧客セグメントがどう移動したか」を見ている(https://markezine.jp/article/detail/49921)

