カゴ落ち率とは
カゴ落ち率とは、ECサイトで商品をカートに入れたものの、購入まで至らなかった顧客の割合のこと。企業にとっては既に購買意欲がある顧客を取り逃がす機会損失を可視化する指標であり、顧客にとっては「何か購入をためらう理由がある」というシグナルでもある。
バーのマスターが聞いた話
夜中の10時すぎ、食品ECを運営するそうがカウンターに座った。顔が曇っている。
「マスター、うちのEC、商品をカートに入れてくれるお客さんは結構いるんですよ。でも、そこから買ってくれない人が多くて。CVRはまあまあなんですけど、なんか『ラスト一歩』で逃げられてる感じがする」
マスターはグラスを拭きながら聞いた。
「で、カゴに入れたまま放置する人、何割くらい?」
「で、カゴに入れたまま放置する人、何割くらい?」会社では『購入に至らない人が多い』っていう話はするんですけど、カゴに入れた人のうち何割が去るのかは…」
マスターが身を乗り出す。
マスターが身を乗り出す。
そうは首を傾げた。
マスターは続ける。
「よくある理由は『送料が高い』『明日までに要るから待つ』『この情報入力が面倒臭い』『ちょっと値段確認したい』。どれも『商品はいらない』じゃない。その人は『買う人』だ。ただし、その『買う』が完成してないだけ。つまり、ここが勝負どころなんだ」
そうが乗り出す。「え、つまり…?」
「つまり、カゴ落ちした人宛に『〇〇円の送料がかかります』って事前に伝えるとか、『明日までなら対応できます』とか、『決済時間は30秒です』とか、その『別の理由』をサッと潰してやれば、相当な数が買うってわけだ。消えた顧客じゃなくて、実は目の前にいるお客さんなんだよ」
そうの表情が変わった。「確認します。うちのカゴ落ち率、出してみます」
マスターが微笑む。「そこだ。それが第一歩だ」
多くの会社がやりがちな失敗
ほとんどのEC企業は、カゴ落ちした人を「失敗」と見なしている。しかし実際には、彼らを追跡する仕組みを作っていない。例えば、商品をカートに入れたまま3時間経過した顧客に対して、メールやLINEで「お忘れですか?」と声をかけることもない。あるいは、キャンペーン期間に「実は送料無料です」と後付けで情報を追加してもカゴ落ちした人には届かない。つまり、カゴ落ちした顧客のデータを持っているのに、何もしていないという企業が大半なのだ。
カゴ落ち率 = カゴに入れたが購入しなかった人数 ÷ カゴに入れた総人数
【一般的なベンチマーク】
・アパレルEC:65~75%
・食品EC:50~60%
・化粧品EC:45~55%
【機会損失の試算例】
月間カゴイン数 1,000人 × カゴ落ち率 60% = 600人のロス
平均商品単価 3,000円 × 600人 = 180万円の逃げ損失
そのうち10%をカゴ落ちメールで回収すれば = 月18万円の追加売上
📋 本日の処方箋
1. カゴ落ち率を計測する
【なぜやるか】自分たちの『本当の問題』がどこにあるのか、今は見えていないから
【どうやるか】Googleアナリティクスやタグマネージャーで「カートビュー」と「購入」を設定し、カゴ落ち率を算出する。毎週確認する数字にする
2. カゴに入れた直後の顧客に理由を聞く
【なぜやるか】なぜ落ちるのかを推測ではなく、データで知るため
【どうやるか】カゴを離脱した人に対して、アンケートやポップアップで「何か気になることはありますか?」と聞く。「送料」「支払い方法」「商品情報不足」などの選択肢を用意すれば、パターンが見える
3. 理由別のカゴ落ち復帰キャンペーンを設計する
【なぜやるか】同じ復帰施策では、全員に効かないから
【どうやるか】「送料で落ちた層」には「今週、送料無料キャンペーン」のメール。「支払い方法が理由」の層には「コンビニ払い追加」の案内。「情報不足」の層には「使用例や口コミ」を送る
4. カゴ落ち防止機能を実装する
【なぜやるか】落ちる前に理由を潰すのが、復帰より効率的だから
【どうやるか】決済画面の手前で「送料はいくら」「対応支払い方法は何か」を明確に表示。チェックアウトのステップ数も減らす(理想は3ステップ以下)
5. カゴ落ち後の『黄金時間』に施策を打つ
【なぜやるか】時間が経つほど、購買意欲は冷める
【どうやるか】カゴに入れた直後、1時間以内にメール。深夜だったら朝一に送る。LINEなら直後が効果大。メールなら2回目は24時間後
業種を超えた応用例
これはECだけの課題ではない。サプリメントを試しにカゴに入れたものの「本当に効果あるのか3ヶ月待つのか…」と迷う層、アウトドア用品の高額商品を「今シーズンまだ先だし」と保留する層、定期通販の初回注文をカゴに入れたまま「解約方法がわかりやすいか確認してから」と様子見する層。全て同じ構図だ。カゴ落ち率を上げるのは、その顧客の『本当の課題』が何かを知る第一歩になる。

