チャネル別LTV分析とは|季節変動で判断がズレる理由

CRM用語集
チャネル別LTV分析とは

顧客がどのマーケティングチャネル(広告媒体、SNS、オーガニック検索など)経由で流入したかによって、その顧客グループのLTVがどう異なるかを比較する分析。チャネルごとの顧客の質と利益性を判断する。


りつが席に着いたのは月曜日の夕方。キャンプから帰ってきたばかりで、まだ山の方に意識が向いているようだ。

「あ、マスター、ちょっと聞いてもいいですか。春のキャンペーンの数字を見てて、混乱してるんですよ」

グラスを置いて、スマホを出した。

「去年は Instagram 経由のお客さんって、LTV が110,000円だったんです。でも今年の春は71,000円。同じチャネルなのに、こんなに下がるって、何か施策が悪いのかな、って」

スマホ画面をこちら側に向ける。

「ちなみに、その『春のLTV』って、どの期間で計算してるんです?」

「あ、えーと。キャンペーン期間の3月1日から4月30日までの新規が、その期間内に使った売上、で」

あ。そこだ。

「3月に来た人が4月に何か買った売上も含まれてるし、5月以降に買ったものは入ってないってことですね」

「はい、そこを時系列で見たい、って上司に言われて」

そこがズレてる。

「多くの企業がやりがちなんですけど、チャネル別LTV分析でやっちゃう失敗がある。その『期間で区切ったLTV』と、『同じ人の人生LTV』を混ぜちゃうんです」

りつは眉を少し寄せた。

「Instagram 経由の新規って、購入周期がどれくらいですか。アウトドア用品って」

「あ、ターゲットで違うんですけど。ビギナーは春に初めて買って、秋にステップアップで買う。季節ごと、ですね」

そこだ。

「じゃあ春に Instagram で来た人って、多くが春物を買ってる。でも本当のLTVは、その秋のステップアップ購入、冬の継続購入を含めた全部ですよね。それなのに『4月末で区切る』と、秋口の購入が別のキャンペーン期間の数字扱いになっちゃう」

「あ。ということは、ビギナーの秋買いが2年目のデータに入っちゃってるわけですか」

「そういうこと。で、4月30日で区切った数字だと、Instagram 経由の人たちは『春の初期買いだけ』を拾ってる。本来なら秋に来る売上を、別のチャネルの成果にしちゃってる」

りつがスマホをもう一度見た。

「71,000円は、つまり『春のアウトドアシーズンの初期客』の数字で。110,000円は『去年の春に来た人が1年かけて買った全部』ですか」

「ですね。だから下がったわけじゃなくて、見てる範囲がズレてる。チャネル別LTV分析をするなら、同じモノサシで測らないと」

マスターはカウンターのメモ帳に数字を書いた。

・春新規の本来LTV=春初期買い(71,000円) + 夏の継続 + 秋のステップアップ + 冬の検証買い
・期間区切りLTV=4月30日時点での累積売上だけ
・同じ顧客なのに、測定期間で別チャネル化する

「それに加えてですね。チャネル別LTV分析の落とし穴がもうひとつ。『新規をいつ集めたか』でも、その後の購買パターンが変わっちゃう」

「どういうことです」

「アウトドア用品の場合、3月新規と9月新規だと、その人が使い方を学ぶまでの季節環境が全然違うじゃないですか。春に来た人は、即座に山に行きます。秋に来た人は『来年の春まで準備期間』ができる」

りつの顔が変わった。

「あ、つまり。秋新規の方が、実はステップアップまでの流れが安定してるってことですか」

「多いです。それをチャネル別LTV分析で『3月 Instagram は71,000円、9月 Instagram は92,000円』って並べると『秋の方が効率いい』って見えますけど、実はチャネルの質じゃなくて、季節と新規集計のタイミングがずれてるだけ」

マスターはグラスを傾けた。

「季節変動の大きいECで、チャネル別LTV分析をするなら、『同じシーズンの比較』と『同じコホート(入客タイミングが同じ人たち)の比較』を分けて見ておかないと、施策の判断がズレやすい」

「結局、Instagram の質は変わってないのに、数字で比較しちゃえば『何か施策が悪い』って見えちゃう」

「そうですね。で、それに気づかずに『3月配信の内容を変えよう』とか『クリエイティブ修正しよう』ってなると、実は必要ない施策を打つ。で、秋には『秋新規が良かったから秋施策を強化しよう』になる。でも秋がもともと良い季節なだけで」

りつはスマホをしまった。

「あ、だから上司が『去年比どうなってる?』しか言わないんだ。実は季節比較もしないといけないのに」

「多くのCRM担当者がそこで混乱するんですよ。全社的に『前年同月比で評価する』文化があると、チャネル別LTV分析は余計にズレやすい」

静かに飲みながら、りつが思考の奥底を探っているようだった。

「では、どう見ればいいんですか」

「シンプルです。『同じシーズン、同じチャネル、同じ初回購入時期』の人たちをコホート化して、その人たちが『初回購入から何ヶ月後』に、どんなカテゴリを買ってるか。その周期で見る。チャネルは、その周期の中でどう違うか。そっち側です」

りつはメニューをめくりながら呟いた。

「データは見てるんですけど、施策に落とせなくて、ってのは。たぶんこれですね。期間で見たり、シーズンで見たり、チャネルで見たり、バラバラだから」

マスターは頷いて、新しいグラスを置いた。

よくある質問

Q:期間区切りのLTV分析でいけないんですか?

季節変動が小さい商材なら問題ない。でもアウトドア用品みたいに「シーズンごとに購買パターンが変わる」場合、期間区切りだけだと、チャネルの質と季節効果が混ざってしまう。

Q:チャネル別LTV分析で何を比較すべきですか?

同じシーズン、同じコホート(初回購入タイミング)で、購買周期と購買カテゴリがどう違うかを見る。チャネルの違いが、実際の行動パターンにどう影響してるかだけが本当の情報。

Q:去年比を見てはいけないんですか?

去年比は、全社評価には必要。でもチャネル別分析には向かない。毎年『季節』『気象』『商品入荷』『競合』が違うから、分解して見ないとズレる。

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