やってみたんですが、失敗しました
あやは、バーのカウンターに身を預けながら、いつもより深いため息をついていた。化粧品D2Cの企業でカスタマー育成を担当し、半年間リピート施策を改善したのに、離脱率が下がらないという。
「初回購入後の使用開始率は上がったんです。商品説明も削ってシンプルにした。なのに、3ヶ月目で買わなくなる人が減らない。数字で見ると、『半年買わなきゃ離脱』って勝手に定義してて、6ヶ月目を目安に施策を打ってたんですけど、それって違うのかなって…」
マスターは静かに聞いていた。その後、グラスを拭きながら、こう返した。
「半年」は、あなたの想像だと思う
離脱期限を、単純な時間で決めるのはよくある落とし穴だ。特に化粧品D2Cは、その傾向が強い。なぜなら、ビジネスの実績をちゃんと見ないで、「業界的に肌の慣れは28日周期」のような話を聞いて、「じゃあ半年見ておこう」と決めてしまうことが多いから。
でもね。実績を見ると、意味が違う。
「あやさんの会社で、初回購入後に最初に使う人は何日目?」
あや:「あ、これが結構ばらつくんです。翌日から始める人もいるし、1週間後、2週間後…」
「その『最初の使用』から、2回目の購入までは、平均で何日?」
あや:「え、そこ…見てなかったです」
そこなんだ。
離脱定義は、時間で決めるんじゃなくて、実績から補正する。「購入日から半年」じゃなくて、「使用開始から何日購入がないか」とか、「成分が肌に蓄積する期間を過ぎても使い続けてるか」とか、実際のお客様の購買サイクルを見るんだ。すると、「半年」は実は「40日かもしれない」「120日かもしれない」。肌質や使用量の個人差で全然違う。
実績の中身を見ると、見えてくることがある
「使用開始がうまくいってる」と思ってた。初回使用率も上がった。でも、離脱は減らない。
これって、多くの場合、こういうことだ:
初回使用は改善した。でも、そこから「毎日使い続ける」というステップが、スムーズじゃなかった。商品説明は減らした。でも、使用量の目安、肌への反応の感じ方、そういう「ツール外」の部分でつまずいてた。
使用開始後、1週間以内に「定期的に使うレベルのルーティン」ができてるお客様と、そうじゃないお客様を分けると、多分離脱パターンが全然違う。それを見ずに、『半年目を見張ろう』と決めると、その間に消えてく人たちを見逃してた。
あや:「あ…3ヶ月で買わなくなる人、もしかして最初から毎日使ってなくて…」
その可能性がある。で、そっちを改善した方が、「半年まで粘ってもらう施策」より、効く。
同じ「3ヶ月目」でも、意味が違う
話は少し複雑になる。
確かに、化粧品D2Cのリピートには「定着段階」がある。ただし、それは「購入日から3ヶ月」じゃなくて、「毎日使用開始から28日」かもしれない。成分の特性によっては、「毎日使用開始から60日」かもしれない。
つまり、あなたのお客様が使い始めるタイミングがバラバラなら、「購入日から計算」した離脱期限は、実は機能してない。
では、どうするか。
施策としては、こう考える。
- 初回使用から3日以内に、毎日使うルーティンをつくるサポートをする(説明ではなく、実際にお客様の生活フローに組み込む)
- 毎日使用開始から、「28日」「60日」「90日」の3つのマイルストーンを引く
- その日数で、実績の中で「継続」と「離脱」を分ける
- どこで離脱が集中してるか、その直前に何が起きてたか(使用頻度が下がった、肌トラブル、成分への慣れ感じた等)を見る
- その時点でのF2転換の施策を、もう一度設計する
「半年買わなきゃ離脱」は、実績を見てない定義だ。あなたのお客様の実際の使い始め、使い続け、使わなくなるタイミングを見たら、その定義は変わる。そしてその方が、施策も、数字も、信用できるようになる。
あやはカウンターでうなずいていた。マスターはグラスを置いて、続けた。
「それにね。もう一つ。毎日使用がない人は、実は『離脱予備軍』じゃなくて、『導入失敗』なんだ。離脱定義がズレてると、その人たちを『継続者』として数え続けることになる。そうすると、本当は何を改善すべきか、見えなくなる」
あやはそこで初めて、「あ、使用方法の提案の質の問題かもしれない」と気づいた様子だった。

