LINE友だち数が増えても売上が伸びない|一斉配信の落とし穴

crm-talks

四月の火曜夜。そうが入ってくるなり、ため息をついた。

「マスター、LINE友だち数が五千人を超えたんですよ。広告も結構やってて、毎月二百人くらい増えてるんです。でも…売上、あんまり伸びてないんです。なんでだろう」

テーブルに携帯を置いて、マスターに画面を見せる。確かに友だち数は立派な数字だ。でも、そのあとの顔つきが全部を物語っていた。

「友だちが増える」と「売上が増える」は別の話だ

マスターはグラスを傾けた。

「で、その五千人に、何を配信してるんだ」

「週三回、新商品の紹介とか、キャンペーン情報をLINEで一斉配信しているんです。あと、LINEリッチメニューで、イチオシ商品へのリンクも貼ってます」

そこだ。マスターは静かに口を開いた。

「その五千人の中に、さ。一度買った人、二度買った人、初めてLINE登録しただけの人、全部混ざってるんじゃないか」

「…そうですね。ブロック率が最近十五パーセント超えてるんですよ。それが気になってて」

案の定だ。マスターはため息をつかずに続けた。

「友だち数が増えても、その中身を見てなければ、増えれば増えるほど逆効果になる。現在、リピーターのメールと、食いつきのいい新規の配信が、同じ内容で一括送信されてるわけだろ。リピーターは『また同じ話か』と思うし、新規は『何この商品?必要ないな』で、すぐブロックする。広告で集めた人数は、その後のコミュニケーション次第で化けもするし、完全に無駄になることもある。君の場合、後者になってる可能性が高い」

広告後のコミュニケーションが、全部を決めている

マスターが続けた。

「LINE登録直後のお客様が最も熱いタイミングだって、知ってるか。新規が登録した瞬間、その人は『この企業、何を売ってるのか』『本当に自分に必要か』を判断してる。その時点で、全員に『新商品です』『今だけ三〇パーセント引き』みたいなクーポンを送ってたら、どう思う」

「あ…それ、うちやってます」

マスターは笑わなかった。

「そこだな。新規は流入経路がバラバラだろ。SNS広告から来た人もいれば、検索から来た人もいる。同じクーポンじゃなくて、『なぜあなたが登録したのか』を思い出させるメッセージが必要なんだ。クーポンはそのあとの『後押し』でいい。本質は、その人がお客様の商品で何をしたいのか、を理解することだ」

そうが顔を上げた。

「では、どうしたらいいですか」

会員構造と離脱の定義を、まず分けろ

マスターはグラスを置いた。

「現実の話をしよう。五千人の友だち数があるなら、その人たちを『初回購入前』『初回購入後だが繰り返し購入がまだ』『繰り返し購入している』『何もしてない間に割と日数が経ってる』の四段階に分ける。そして、各段階で送る内容を全く変える」

「四段階ですか。具体的には…」

「初回購入前の新規なら『正しい使い方はこれです』『使い始めて一週間でこういう実感が出やすいです』『よくある不安:〇〇ですが、実は△△なので大丈夫です』こういう内容を、段階的に送る。初回買った直後なら『お待たせしました、説明書を参考にしてください』『実感までは大体〇日が目安です』『その間に不安なことがあれば、ここで質問してください』。繰り返し購入してる人なら『次の購入まであと何日が目安です』『この季節だから、こういう使い方もありますよ』。そして何もしてない間に日数が経ってる人には『最近どう?困ってることあれば聞きます』」

そうはメモを取り始めた。

「それって、セグメント配信ですか」

「そう。だけど、ただセグメントするだけじゃ意味がない。大事なのは『その人の状態に合った』『その人が必要としてる』内容を送ることだ。クーポンじゃなくて、使い方だったり、悩みの解決だったり、次のステップだったり。継続率を上げるのはクーポンじゃなく『続ける理由を作ること』だ」

ただし、離脱の定義を曖昧にしてると、全部がズレていく

マスターは身を乗り出した。

「そして、もう一つ大事なのが『離脱の定義』だ。君のところ、何日連続で購入がなかったら『離脱リスク』と判定してるんだ」

「あ…それ、決めてないです。ブロック率が高いから、とりあえず新規の配信を増やそう、って考えてたんです」

ここだ。マスターは静かに、でも確実に語った。

「そこが全部の間違いの根源だ。食品の通販なら、賞味期限と消費サイクルで『次いつ買うのが自然か』が決まる。サプリなら三カ月は試してから判定すべき。化粧品なら、製品によってターンオーバーとの関係で使い切り日数が全く違う。その定義なしに『何か反応が鈍いから、新規への配信を増やそう』ってやってたら、本当は『正常に使用中』の人にまで『買ってください』って追い詰めてることになる」

そうの顔が少し青くなった。

「あ…やってるかもしれません。購入から七十日経つと、自動的に『そろそろいかがですか』って配信が来るようになってるんです。でも商品によって消費ペースって違うと思うんですが…」

「その通り。君のお客様は『まだ使ってるから、買わなくていい』を何度も無視されてると、最終的にブロックする。友だち数は増えるけど、実際に売上に貢献する人は減ってる状態だ。広告費を使って集めた人が、配信で消えていってる。そして『友だちが増えても売上が伸びない』ってことになってる」

マスターが見た、二つの条件分岐

グラスが空になった。マスターはおかわりを入れた。

「ここからが現実の話だけど、君の会社の友だち五千人の中身によって、やり方が変わる。もしその中で『初回購入直後で、まだ何度も買ってない新規ばかり』なら、今すぐセグメント配信に切り替えるべき。一斉配信は向いてない。ただし、もし『既にリピーターになってる人が七〇パーセント以上いる』なら、その人たちに『ずっと同じ提案』をするのはもっと危険だ。購入前、購入直後、繰り返し購入開始後、で全く伝える内容が違うってことだ」

「では、まず何をしたらいいですか」

マスターは少し考えた。

「まずは、LINEのデータを全部洗い出してみろ。友だちの『初回購入日』『購入回数』『最後の購入日』『どの流入経路から来たのか』。そうしたら、五千人がどういう構成なのか見えてくる。その時点で初めて『この人たちに何を送るべきか』が見える。大事なのは『広告で友だちを増やすこと』じゃなく『広告で集めた人の後ろに何を用意するか』だ」

そう、メモを見直していた。

「あと一つ。『流入経路』って、すごい重要だって言ったけど、これって何ですか」

「SNS広告から来たのか、検索から来たのか、友達紹介から来たのか。その違いで、その人の『ニーズの温度』が全く違う。SNS広告で『半ば興味本位で』来た人と、検索で『明確に問題を抱えて』来た人に、同じメッセージを送ったら、後者は『こんなので解決するのか』って疑ってかかる。流入経路ごとに『なぜあなたはここに来たのか』を思い出させるメッセージが必要だ」

マスターはグラスを傾けた。

「ちなみに、聞きたいんだけど。LINE登録した直後に、アンケートとか取ってるのか。『何に困ってますか』『どんな悩みがありますか』みたいな」

「あ…それ、やってないですね」

「そこも、やる価値がある。登録直後が最も熱量が高い瞬間だから、その時に『あなたはどんなニーズがあるのか』を一問でいいから聞く。その回答で、その後の配信内容を分岐させる。公共の乗り物のアプリみたいに『既にアプリを使ってる人のためにLINEも用意した』みたいなシンプルな統合じゃなくて、実は配信の側も『誰に何を送るか』で最適化する。そうすることで、同じLINEでも売上の伸び方が全く変わる」

処方箋

  • 五千人の友だちを『初回購入前』『初回購入直後』『繰り返し購入中』『購入間隔が空いている』の四段階に分類し、各段階で送る内容を完全に変える
  • 商品ごとに『次の購入タイミング』を定義する。一律七十日ではなく、実際の消費サイクルに合わせて『この人、そろそろ使い切る頃だな』と判定する
  • LINE登録直後に『何に困ってますか』『どうなりたいですか』を一問取得し、その回答でシナリオを分岐させる
  • 配信内容は『クーポン・新商品・キャンペーン』から『正しい使い方』『実感までの目安』『よくある不安の解消』にシフトし、継続率を上げる理由を作る

そうが席を立った。

「ありがとうございます。試してみます」

マスターは身を引いた。

「友だち数の報告も大事だけど、その次はブロック率がどう変わったか、リピート購入者がどう増えたか、そっちを見ろ。売上は、その先にあるんだ」

そうはうなずいて出ていった。

マスターはグラスを傾けた。広告で集めるのは簡単だ。その後ろで『何を用意するか』が全部を決める。二十年見てきた中で、その違いをわかってない担当者は、何年経っても数字が伸びない。友だちが増える度に、その苦しみが大きくなっていく。

また来いよ。

参考資料:
公共ライドシェア・オンデマンド交通を展開するパブリックテクノロジーズ、「パブテクAI配車」がLINE連携に対応。アプリ不要で、LINEから配車予約が可能に(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000060925.html)
タイトルとURLをコピーしました